日銀マイナス金利解除ー松尾匡先生街頭解説演説要旨ー #1

日銀のマイナス金利解除に反対しているのはれいわ新選組だけ

日銀のマイナス金利解除などの金利をあげる政策について、与党だけではなく、立憲民主党などの野党も反対していません。これに反対しているのはれいわ新選組だけです。

【編集部解説】マイナス金利とは

日銀は市中銀行(私たちが使っている普通の銀行や信用金庫のことです)にお金を貸し出す金利を上げ下げすることで景気を調節しています。これを金利政策といいます。金利が下がると、企業の設備投資や個人の住宅ローンなども借りやすくなり、景気上昇がうながされます。景気が過熱すれば、金利を上げて景気を押さえます。

資本主義経済は好景気と不景気が循環しておこることは避けられません、しかし、その変化が大きすぎると経済システムそのものを破綻させる恐慌となり、大量の失業者や自殺者が大量に出て社会そのものが不安定になってしまいます。その変化をなだらかなものにして社会不安をおこさないようにするのが政府日銀の役割なのです。

この間、日本経済はずっと不景気のままでした。そのために政府日銀は「大規模金融緩和」をおこない、ついに金利は0というところまでいきましたが、それでもなお景気は回復しなかったので、2016年からは「マイナス金利政策」をとりました。市中銀行にもっと積極的に貸し出しを促すために市中銀行が日銀に持つ口座(銀行だけが持てます)残高の一部に手数料をかけることにしたのです。つまり、市中銀行は貸し出しで生まれる預金に対して、日銀口座が多すぎると負担がどんどん増えていく仕組みにしたのです。

また、市中銀行から短期の国債を買うときに、満期になったとき国が払う額面より高く買って利回りをマイナスにする操作もしました。

マイナス金利は究極の利下げ政策でした。これが「異次元の金融緩和」といわれるものです。お金を預けておけば金利がもらえるのが常識で、マイナス金利は非常措置でした。今回、物価上昇とささいな賃金上昇(ただし、まだ実際にはおこっていまん)を理由にこれを解除しました。

今、金利が上がるとなにがおこるか

茨城新聞の3/20付けの社説記事です。期間限定ですので、やがてリンクは切れます。https://news.yahoo.co.jp/articles/81738f83c3883d44d03dd9f0c24b7f629df7cc13

設備投資の縮小とゼロゼロ融資の返済不能

中小企業の方はギリギリのところで設備投資を判断しています。金利が上がれば設備投資は見送ると考える経営者が多数です。

そうすると、設備投資がされない、すなわち機械が売れない、工場が建てられないということで、景気がせっかくよくなりかけているかも知れないのに、また悪くなってしまいます。

コロナ時にゼロゼロ融資(無担保・無利子融資)を受けた中小企業の方々が、いまだ返済を完了できないなか返済期限がせまれば借り換えをしなければなりません。そんな時に金利があがってしまうと借り換えができない、商売が続けられないということになりかねません。

中小企業の倒産は増大に転じている

今、株があがって一見景気がよいように見えても、実は中小企業の倒産は大変増えています。去年1年間の企業の倒産は前の年に較べて33.3%増えているのです。

リーマンショック(2008年)以来、徐々に倒産件数は減ってきていたのですが、去年から今年にかけていきなり33%も増えました。これはここ最近では見られないような急激な増加です。実はすごいことがおこっているのです。(左グラフ参照)

倒産の理由は「販売不振」などの「不況型倒産」です。景気がよくなっているというイメージをもっている人が多いかも知れませんが、実は不況型倒産が一番多いというのが今なのです。

ゼロゼロ融資が返せないので倒産という事例がどんどん増えています。

2月の倒産件数は22ヶ月連続で前の年の同じ月の倒産件数を上回りつづけています。

政府の中小企業潰し政策

ゼロゼロ融資が始まった頃は、コロナ禍が終わればすぐにもとに戻るだろうということで始まりました。

しかし、ウクライナ戦争がはじまったりして、輸入原材料や燃料の価格が上がるということがありました。一方、売り上げは伸びません。そんな中で返済期がきたら大変なことになることは、十分予想できたことでした。みんなが言っていたのに政府は何の手立ても打ちませんでした。

そんなタイミングで日銀が金利を上げるという決定したわけです。これは、そういった中小企業は潰れてくれといっているようなものなのです。

実は、政府はこの間、日本の中小企業をなるべく減らしていこうという方針でやってきています。

京都に住んでいる「経済アナリスト」アトキンソンさんは菅政権のブレーンだった人です。その人が「中小企業は生産性が低すぎるから、中小企業の数を半分ぐらいにしなければならない」と言っていたことは皆さん聞いたことがあると思います。

アトキンソン氏のインタビュー(日経ビジネスより)
「中小企業は今の半分以下に」 暴論か正論か話題呼ぶhttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO52478210S9A121C1000000/

コロナが始まった頃、東京財団政策研究所(政府のブレーンとなっている人がたくさん所属する民間シンクタンク)が、このコロナ禍を利用して中小企業の新陳代謝を進めなければならない。やみくもにコロナ支援とかしてはいけないということを主張しました。

例えば、一橋大学教授佐藤 主光氏の以下の主張
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3607

財政はデジタル分野のような生産性の高いところに集中して出しなさいというようなことを提言し続けました。まさにコロナ禍を利用して中小企業を潰していこうということを堂々と宣言していました。

政府関係の審議会などの委員にも、この研究所に所属する先生方がブレーンになっているのですが、この人達はコロナ禍の補助金を打ち切れと何度も政府に提言をしていました。補助金を出していたら新陳代謝はすすみません。コロナ禍こそが中小企業を潰すチャンスというのが、この人たちの考え方です。

そして、この提言に引きずられるように、政府は補助金の範囲をどんどん狭くしていき、なんと補助金予算を30兆円も使い残すというようなことになりました。こんなことをやってきたのがこの間の政府なんです。

コロナ予算、30兆円使い残し 消化はGDP比7% 米13%に見劣り 成長へ財政回らず
日本経済新聞記事 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA11A0I0R10C21A6000000/

日本では労働人口の7割が中小企業で働いています。その中小企業を潰そうとしてきたのが日本政府なのです。

コロナ禍の前から中小企業潰しははじまっていた

コロナ禍の直前、2019年に消費税が10%にあがりました。実は、コロナ禍になる前から日本経済はこの増税で落ち込んでいました。現在も消費税が10%に上がる前の水準まで消費も雇用も戻っていません。消費税を上げたことによる落ち込みはまだ元に戻っていないのです。

中小企業は消費税が上がってもそれを売値に転嫁できず、自らかぶることで苦しめられています。それにコロナ禍が重なり苦しみは倍加しました。

さらに、それに追い打ちをかけるようにインボイスを導入しました。インボイスの目的は零細事業者を標的にした増税に他なりません。

インボイスは実質増税!東京MXの番組内で荻原博子さんらが解説
https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202311230650/detail/

これら消費税率アップもインボイスも中小企業を潰す武器でした。それにプラスして日銀が金利を上げることでゼロゼロ融資の返済ができなくなっていきます。このように生産性が悪いものは全部潰してしまえという政府の大きな方針の中にあるんだと有権者の皆様にはご理解いただきたい。

こういう状況の中で、すべてに反対しているのはれいわ新選組だけなのです。